【漫画レビュー】心がほっこりして本を好きになる漫画【書店員 波山個間子】

あなたの人生に文学を。どうもどうも病理担当シーザーです。

最近、本を読むときは図書館などは利用せず、kindle unlimitedで読める本を中心に濫読すること多くなっています。kindle unlimitedをはじめた当初は月額1000円のサブスクなので、元を取らないとと、毎日毎日、様々な本を読み漁って余暇時間を過ごしておりました。その結果、最近は本を読まないと、落ち着かない身体となり、読書することもだんだん好きになってきました。

そうやって読み漁っておりますと、結構マイナーな本や漫画の中に名作が隠れていて、なんだか宝さがしをしているような感覚になってきます。今回はそんなわたしが探し当てたお宝の中の一冊、「書店員 波山個間子」の紹介をさせていただきます

まず、最初にみなさんに知っていただきたい事といたしまして、この漫画の中にて紹介される「本」は実際に現実に存在するということです。ですので、漫画のストーリ―を楽しみながら、そのお話の中で紹介される現実の「本」の内容にも触れることもでき楽しめるという、一度で二度おいしい本となっております。

自分の知っている本が出てきたときは、この本がどんな風にストーリーとからむんだろうって考えたり、自分の知らない本が出てきたときは、こんな本があるんだ、こんど読んでみようかなと思わせてくれたりと、本好きの方にはたまらない内容となっております。

あらすじ

出典 書店員 波山個間子 コミック1巻より

書店員の波山個間子は自分が勤める青髭ブックスで、ただ一人、ブックアドバイザーをしております。ブックアドバイザーというのは、お客さんの探している本を探したり、本についてアドバイスしたりする方のことです。

お客さんがタイトルを覚えておらず、また、あらすじを断片的にしか覚えていないけれど、その本を購入したいというときに本を探すのを手伝ったり、こんなジャンルで今の自分をこんな気持ちにさせてくれるような本を探しているんだけどといったような、かなり曖昧な本選びにも力を貸してくれたりします。

こんな曖昧な記憶でも本を探しあててくれるくらいですから、主人公は本に関してめちゃくちゃ詳しいのです。本の内容やタイトルだけでなく、海外の本の翻訳者の違いによってお客さんの好みがわかれることも把握しており、そこにも配慮したアドバイスもしています。

主人公がその本の知識を活かして様々なお客さんへ、様々な本を解説しながら、勧めている様子を見ていると、読者である自分もお客さん側の視点になって、勧められた本を読みたくなってしまいます。

また、単純に本をお客さんに勧めるというテイストの話しだけでなく、書店員 波山個間子のブックアドバイザーになるにいたった経緯、本を好きになった経緯などを本のエピソードと絡めて紹介しています。

また、登場人物も主人公ふくめて魅力あふれる個性的なメンバーがそろっており、本にあまり詳しくないけど本は売りたい店長、元SEのビジネス書担当「理路整然」さん、アマチュア舞台女優の新人さんなどなど、この漫画に華を添えてくれています。

お気に入りの話し

1巻、2巻、番外編を通してどのお話も魅力的なお話ばかりなのですが、個人的にとっても気になった、お気に入りのお話を3つ紹介します。

第4話「少年の日の思い出」

出典 書店員 波山個間子 コミック1巻より

この話ではドイツの作家「ヘルマン・ヘッセ」の「少年の日の思い出」を中心に物語が進行していきます。ある常連のお客さんが「少年の思い出」がのっている本をさがしにきます。主人公の本の知識から、当然、「少年の思い出」も読んでいるだろうと、主人公に語りかけるのですが。。。

「じつは私ヘルマンヘッセを読んだことないんです」

その後の第5話、第6話で主人公が「ヘルマン・ヘッセ」を読もうとしなくなった、経緯がわかります。生きるのに文学が必要だった主人公が文学と出会った話であり、「ヘルマン・ヘッセ」を遠ざける理由となったお話です。ただ、これは重大な事件が過去にあったからといった理由ではございません。なんだそんな理由か、と思う方も読者の中には少なからずいるのではないかと思います。しかし、青春時代に生きるのに文学が必要であった主人公と同じ立場の読者の方々にはご納得いただけるようなエピソードなのではないかと思います。ぜひ本編をごご覧ください。また、この話の終わり方かたが、なんとも文学的で、じんわりと読者の心を揺らしてくれます。そちらも楽しみに読んでいただけるとより、ストーリーが面白く感じられるのではないでしょうか。

第11話「吉野朔実は本が好き」

出典 書店員 波山個間子 コミック2巻より

このお話は12話につながる物語であることと、本がテーマのコミックエッセイを紹介しているお話です。まさに、この本もそうなんですが、本の中に別の本のことが書いてあって、そこからリンクして次の本を読むきっかけになる本、ということで、こういった類の本は私も大好物でありますので、この話を見て、「吉野朔実は本が好き」の購入を検討しました。しかし残念なことに、電子書籍では出版されていないことが判明しましたので、現在は保留中です。価格もAmazonで3300円と結構いいお値段です。ただ、値段にみあった、かなり内容も厚さもボリューミーな本であること(650ページ)と、ブックアドバイザーの波山さんが進める本ですからきっといい本なんでしょう。買おうかなぁ。どうしようかなぁ。

第12話「妻を帽子と間違えた男」

出典 書店員 波山個間子 コミック2巻より

11話からの繋がりです。著者はオリバー・サックス。紹介されている作品は「妻を帽子と間違えた男」タイトルから、めちゃくちゃ惹かれます。オリバーサックスはイギリスの神経学者で自身の扱った患者について記した本を多く残しており、この本はそのうちの一冊です。この本では、トゥレット症候群、自閉症、アルツハイマーなどと闘う人々を臨床医からの目線で描かれた作品のようです。

この漫画では、表題の「妻を帽子と間違えた男」のエピソードと、もう一つ、キューピッド病のおばあさんのお話をピックアップして取りあつかっています。あらすじはこうです。

90歳のおばあちゃんが、88歳を過ぎた頃から、なんだか若い男性が気になって、毎日うきうき楽しい気分だという。こんな楽しい気分は20年ぶり。この「幸福感」ってなんだろうと受診すると、キューピッド病と診断されます。キューピッド病というのは、昔、売春宿でよく見られた病気で神経梅毒の俗称のことのようです。検査の結果確かにおばあちゃんは、梅毒の再発によりスピロヘータが大脳皮質を刺激して、いい気分にしてくれていたということがわかりました。「これ以上悪くなりたくはないけれど、治りたくもないんです。今の幸せな状態が続くようにして欲しいんです。」

このお話自体も面白いんですけど、そこからのこの漫画の話しの発展のさせ方が、非常に好きで、ここから

「幸福ってなんだろう」

っていう「幸福論」へとお話しを発展させるんです。この漫画の作者の感性がでているなぁと思いました。このおばあさんの場合は精神的なものじゃなくて、身体的な原因で幸せを感じていた。そう考えると、「人間」の「幸福感」って何なんだろう、脳の中の電気信号がどうして「幸福感」というものを作り出すんだろう。そもそも「幸福」とは何だろう?、自分の「幸福」って一体何だろう?。などなど、様々なことが頭を駆け巡り、「幸福」というもの、「人間」というものを考えさせてくれます。

ちなみに、この原作の結末は、おばちゃんにはペニシリンが処方され梅毒の治療は行われ、変性した大脳皮質は修復されずに、めでたくおばあちゃんの「幸福」は死ぬまで続くことになった。原作のオチもなかなか物語じみた感じがして好きでした。

この本も、現在購入を検討中です。こちらも電子書籍はない本なので非常に残念。電子書籍派の私には厳しいところです。電子書籍になる本とならない本の違いはどこにあるのか!気になってきたので、調べてみようと思います。

終わりに

この「書店員 波山個間子」は1巻、2巻と、番外編のみなのでけっこうサクッと読めちゃいます。サクッと読めすぎて、もっといろいろなお話を読みたくなってしまいます。続きを書いてくれないかなぁ。

この漫画の作者である、「黒谷和也」さんの作品はほかにもいくつか、kindle unlimitedで漫画を読むことができるのですが、どのお話も、文学的で、世界観が独特で読者の心を揺らしてくれるお話ばかりです。個人的に好きだったのが、架空の鳥「雌鶏」のお話です。その鳥は朝いちばんの「メエ」という鳴き声が具現化し、その文字は高級食材として珍重されている。。。。。もう冒頭から引き込まれました(笑)。ぜひ気になる方はKindle Unlimitedでお楽しみください。

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