良い本に出あいました。
ホラー小説をよく見るんです。
最近だと京極夏彦、「百物語シリーズ」「嗤う伊右衛門」、恒川光太郎「夜市」
澤村伊智「ぼぎわんが来る」、貴志祐介「天使の囀り」、
乙一「ZOO」「GOTH」、=山白朝子「エムブリオ奇譚」
岩井志麻子「ぼっけえ、きょうてえ」などを読みました。
ライトノベルだと西尾維新の化物語シリーズも好きです。
それぞれ恐怖心をくすぐる魅力的な小説でしたが、今回も素晴らしい本でした。
作者は漫画やアニメ化もされた「屍鬼」の作者でもある小野不由美さん。
わたしは「屍鬼」はアニメで見たんですが、前半の村が徐々に屍鬼に侵食されていく空気感がすごく不気味で恐ろしかったのを覚えています。後半は村人vs屍鬼のハチャメチャバトル物になっていて、それはそれで、楽しめました。(原作は違う感じなんでしょうか?)
アスタロッテちゃん
わたし
アスタロッテちゃん
Contents
タイトルの「残穢」とは
本のタイトルからしてちょっと不吉です。穢れが残る。意味深ですよね。
穢れ=不浄、汚れ
死・出産・疫病・失火・悪行などによって生じ
災いや罪をもたらすとされる
日本人は穢れというものを根源的に嫌う性質があります。。
禊や家を建てる前の地鎮祭、お墓参りのあとは塩をまいたりしますよね。
あれは穢れを落として自分への不幸を避けるという考え方です。
この穢れの概念を押さえて物語を読むと内容を深く理解できますよ。
この本の特徴
主人公は理知的で、怖い話を集めつつも、ほんとうの意味で、怖い話を信じていないタイプ。様々な怪異で生じる出来事の整合性を冷静に分析し、これは関連性があり、同一の怪異だが、この話はここが異なるので、別の怪異であろうとか。読んでいるとほえーーこの主人公頭良いでごわすごわすといった感じです。
そしての本は舞台、岡谷マンション の建つ土地の歴史を、調査をしていくという形で物語が進んでいきます。調査を進めていくと、マンションの立つ前、どころか、その前の前の前の・・と、どんどんと遡り、時代も高度成長期、戦後、戦前へと遡っていきます。
これだけでもわかる方には鳥肌ものではないですか?そんなにこの怪異には残存する力があるのかと・・
また、この物語はいわゆる王道ホラーとは一線を画しているという点も注目すべきポイントであるといえると思います。怪異の連鎖はあるものの、それぞれの怪異はある意味でよくあるもの。単体では、物語にもなることもない、ある意味弱い怪異であるといえるでしょう。それが、土地に穢れという形で残り連鎖を繰り返していくという、怪異単体ではなく、怪異の仕組みが恐ろしいとでもいうのでしょうか。言葉にするのが難しいです。
様々な怪異に見舞われる岡谷マンション、岡谷団地、さらにそこに住んだ過去の人々
畳がこすれるような音
さっと畳と何かがこすれる音。
子どもがいる家では、その子がブランコと言って指を何もない天井に向かって指をさします。
赤ちゃんの泣き声
どこからか、猫の泣き声と間違えてしまうような鳴き声がきこえます。
壁からは・・
いたずら電話
公衆電話からかけてくる若い男の電話。
「いまひとりですか」
床下から聞こえてくる声
おばあちゃんがぼけてしまって、ずっと床下に猫がおる、猫がおるってきかないんです。
しかしその正体は・・
黒い蠢く影達
夕刻、工場跡で黒く蠢く大量の影
読んでいる間に襲ってくる悪寒
話しを読み進めていくと、怪異は連鎖し、場所を変え、時代を変え、人を変え恐怖が伝播していきます。それはまるで、昨今、世間を騒がせているコロナウイルスのように、怪異が感染していくのです。
わたしは自分が今住んでいる部屋の前の住人を知りません。
このマンションが建つ前は何が立っていたのかも知りません。
きっとそこには住人がおり、それぞれの人生を生きていたのでしょう。
さらにそこに住んでいる人の前にも・・前にも・・前にも・・
そこではどんあことがあったのでしょうか。
今では知る由もありません・・
この物語はその土地でおこった出来事を、過去の新聞などの資料や、そこに住んでいた老人方に話を聞いていき、そこで何があったのかを、時代を遡って、遡って解き明かしていきます。怪異の原因をつかむと、さらにもう一つの怪異が現れ、その怪異の招待をつかむと、さらに別の怪異があらわれます。この怪異の源流は何なのか。物語の後半で明かされる真実とは!
続きはぜひ本編でお楽しみください。
読後感が似ている作品
残穢に似ている読後感の小説も紹介しておきます。
「忌録」 著 阿澄思惟
こちらも読後感はインパクトともに最高です。「残穢」と同じく、この本を所有していること自体に耐えられなくなり、KindleUnlimitedで読んだのですが、読了後、すぐにデータを削除しました。
なんというか、こちらの本も、本自体から、染み出てくるものがあり、じわじわとあなたの世界を蝕んでいきます。
「残穢」を読んで面白かったかたにはぜひ読んでいただきたい作品です。
「残穢」の公式スピンオフ作品
「鬼談百景」という同作者の作品があります。こちらは百物語よろしく九十九話の物語が収録されているそうです。なぜ、九十九話かというと、この「残穢」が百話目という扱いになります。
一説によると、百物語の百話目を語り終わると、不吉なことが起こるといいます。
終わりに
この本は松たか子さん主演で実写化もされています。
というか、Youtubeでこの映画の予告を見て、絶対面白いと思って読みました。
本を読了後、実写映画の本編も見てみました。
松たか子さんの語りが、たんたんと話しているのに、心にすっと入ってきます。
現在AmazonPrimeで見ることができます。興味のある方は見てみてくださいね。
今回もお相手は病理担当ホラー好きのシーザーでした。